わが国は石を組み合わせ、景色としたり、あるいは土留めとして、石垣を築いたり、さまざまな石を利用する高度な技術が存在します。 その中で、先人たちは樹木をそこに植え、石垣、石組みの修景性を高めると同時に、石組み自体の強度を強化するためにも樹木を用いてきたものと考えられます。 自然配植の技術論では、樹木の持つ石、岩盤に対する生育特性として、根系のもつ岩盤貫入力や反応力を岩盤貫入型・非貫入型、 根系自由度といった概念で整理してきましたが、まだまだ不十分です。 土中の障害の少ない細粒土質の基盤の下では、樹木根系は放射状に素直に伸びることが多いのですが、 同じ樹種でも、土中に岩のような障害物が存在するとき、(その岩の大きさ、位置によっても変わりますが、)根を迂回させる、根が止まる、 カルス(根瘤)を形成し、そこから細根を多発するなどの異なる反応を引き起こします。 そのことの結果、樹木はその生長を停止したり、あるいは逆に場を得て活力を向上させることすらあると思われます。 活力を向上させるという意味は、岩に沿って流水が走り、また、充分な酸素とともに腐植分解物も流れ込む場が土中深くに形成されることと関係するかと思います。 こういった樹木にとっての石の働きについては、これまであまり研究も議論もされてきませんでした。 しかし、実際、石の多い基盤を得意とする樹木群が存在し、その場を優先的に占めていることを観察するとき、この問題は避けては通れない重要な問題だと認識しています。 また、石垣、石組みにとって、根系が破壊的に働くか、あるいは保護的に働くかは、石組みの保全上、重要であり、将来の石を用いた環境形成にとっての貴重な情報になることかと思います。 |
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